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ドクターの二極化はいつ現れたのか?【後編:医者にも押し寄せるリストラの波】

前編では、「資産家ドクター」と「貧困ドクター」 、かつてはほとんどが高収入であった医師の収入の二極化が現れた流れについてお話してきました。
本記事では、この「資産家ドクター」と「貧困ドクター」の両者の違いはどのような点にあるのか、見ていきましょう。

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高齢化社会で重くのしかかる医療費の増大は、医師の給与にも響く

政府の「日本再興戦略改定2014」では、医療機関の非営利ホールディングカンパニー型法人制度が検討されています。これは医療法人間の合併や権利の移転等を速やかに行うことなどを目的とするもので、病院施設のリストラをしやすくする仕組みともいえます。

さらに2014年に可決された「医療・介護一括法」では、各医療機関に対して病床機能報告制度を義務づけています。これは病床を「高度急性期機能」 「急性期機能」 「回復期機能」 「慢性期機能」の4つに分けて、それぞれの医療機関がどれにするか選ぶ制度です。

都道府県は、医療機関からの報告を受けて病床の提供体制を調節しなければならず、その結果、病院によっては病床機能の変更を強いられる可能性もあるのです。 また2014年度の診療報酬改定では、7対1病床に対して、資格条件の厳格化と2年間で9万床(約25%)の削減が推し進められました。

7対1病床は、本来、手厚い医療が必要な重症患者を対象とするものとして、2006年の診療報酬改定の際に導入されました。ところが、人件費やコストがかかる分、入院基本料も高額となることから、多くの病院が資格条件を満たそうとし、近年では全病棟の4割に達していました。なかには高額の報酬を得ようと軽症患者でも入れる病院が出てくる始末です。これでは国の医療費は一向に減りません。そこで資格条件のハードルを上げることになったのです。

主な厳格化された資格条件には次のようなものがあります。

短期滞在手術等基本料の対象となる手術の拡大

7対1病床の平均在院日数は18日以内でなければなりません。従来はこの条件を満たすために白内障など比較的手軽な手術を受ける患者まで入院させる例もありましたが、これができなくなりました。

重症度、医療・看護必要度の導入

7対1病床は入院患者の15%以上が重症患者でなくてはなりません。そのため、看護の手間を数値化した重症度・看護必要度が用いられてきましたが、その項目に「血圧測定」や「時間尿測定」など簡単なものも含まれていたので、これらが削除されました。

また、7対1病床と同じく高い診療報酬を期待できたICU(集中治療室)も、入院が認められる重症度の基準が厳しくなり、病床数も減らされる方向です。 さらに、2014年度の改定では訪問医療に対しても目が向けられました。これまで訪問医療には診療報酬が高いうえに、高齢者住宅や集合住宅で一度に複数の診療ができるといったメリットがありました。ところが、高齢者が多い住宅を紹介する仲介ビジネスなどが現れ問題となったため、今回の改定で一度に複数の診療をする場合の診療報酬が4分の1程度に減額されたのです。

今、政府は医療費削減のために、2025年までに最大で20万床の病床の削減を目標としています。その分、手厚い医療を必要としていない人たちは自宅や介護施設での治療に切り替えるというのです。具体的なプランは、以下のようになります。

  1. ・長い治療が必要な慢性期の病床を24万~29万床と2割ほど減らす
  2. ・症状が軽く集中的な治療が必要ない患者は自宅や介護施設に移ってもらう
  3. ・重症患者を集中治療する高度急性期の病床を13万床、通常の救急医療を担う急性期の病床を40万床と、それぞれ3割ほど減らす
  4. ・リハビリを施す回復期の病床を38万床と3倍に増やす
  5. ・入院している患者がなるべく早期に自宅に戻れるように力を入れる

そして、2016年度の診療報酬改定の内容も確定しました。財務省は、社会保障費を約1,700億円削減することを目標に診療報酬の引き下げを提案。診療報酬を構成する手術など「本体」と「薬価」のうち、後者の引き下げが決定しましたが、足りない分は、今後「本体」に求められるようになるでしょう。

これらの目標、改定によって病院はさらに大きな減収を余儀なくされます。たとえ経営破たんは免れても、勤務医がリストラの対象になる可能性は少なからずあります。あるいは、リストラとまではいかなくても、実績のない勤務医に配置転換が生じてしまうことは、今までの流れから見ても必然と言えるのではないでしょうか。

今まで7対1病床やICUの担当医は花形でした。しかし、その活躍の場は減少傾向にあります。一方、これからは高齢化社会に向けて、在宅医療や在宅復帰のための地域包括ケア病棟が増えていくことが予想されます。ここで求められるのは、いくつもの併存症を抱える高齢者を治療するために極めて広い知識を持った医師、または365日24時間戦い続けられる若い医師です。

つまり、それ以外の医師は「貧困ドクター」になってしまう可能性が極めて高いと言えるのです。


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